夏の暑さが過ぎ去り、食欲が増す秋。
食べ物も美味しいですが、日本酒も美味しいのが秋♪
「ひやおろし」の時期だからです。
「ひやおろしって初めて聞くな。聞いたことはあるけどどんなお酒?」
そう思う人もいますよね。
ひやおろしは銘柄名ではなく、日本酒の種類です。
主に9月から11月の間に販売されるもの。
その魅力は「ひと月の差でも味わいが変わる」ことにあります。
普通のお酒とも生酒とも違う、「熟成」を楽しむお酒です。
詳しく知っておくと、日本酒の世界がより深まりますよ!
最近日本酒にハマリ始めた、なんていう人も「秋にはひやおろしに限る!」とツウの仲間入りができるかもしれません(笑)
ひやおろしの特徴は以下の通り。
- ひと夏を超え、「熟成」した日本酒である
- 2度目の火入れ(加熱処理)をしていない
- それゆえの味わいの変化がある
熟成?火入れ?
味わいが変わるってどういうこと?
浮かんだハテナについて掘り下げていきますよ!
というわけで
秋に飲みたい日本酒「ひやおろし」とは|販売時期とおすすめの飲み方
をお送りします♪
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生酒との違い|火入れとは
一般的に、冷蔵で売られていないものは「火入れ=加熱処理」してあるものです。
逆に生酒と呼ばれるものは加熱処理していないものです。
「生」や「生搾り」とも銘打っていますね。
最近は、酒造会社の空調設備や冷蔵施設が整ってきたことで、年間を通して生酒も出荷されています。
もちろん酒屋さんやスーパーなど、店舗での冷蔵設備も整い、流通も確立されたためです。
そういった設備がなかった時代にさかのぼりましょう。
日本酒は、簡単に言えば、お米を原料とする発酵酒です。
お米の収穫後の、秋から冬にかけて仕込まれ、醸造されます。
その年に収穫したお米で造った新しいお酒なので、新酒と言います。
冬の間は気温が低く、アルコールによる殺菌効果もあります。
火入れ(加熱)をしない生の状態でも飲めます。
新しい年を、新しいお酒でお祝いする。
新年に飲む新酒には、そういった縁起を担ぐ面もあります。
もちろんそこで、蔵のお酒がすべて飲み尽くされるわけではありません(笑)
気温が高くなっていく春先に、貯蔵する分を火入れ(加熱処理)します。
発酵を安定させる役割です。
火入れをしたら、生よりも味が劣化する、ということではありません。
火入れをすることで、まるみが出やすくなり、長期保存もできるようになります。
日本酒は寝かせること、つまり「熟成」させることで味わいが変わります。
特に暑い夏を蔵で過ごすことで、発酵が進み、秋にはまろやかさが増し、深みのある旨味が出ます。
例えて言うなら、生酒は「若い」お酒。
フレッシュで、荒削りなところもある、新人のようなもの。
香りや味わいも鮮やかで、賑やかな雰囲気があります。
ひやおろしは、成熟した「大人」なお酒。
新人のときのようなフレッシュ感はあまりないですが、角が取れたまるみがあります。
香りも味わいも落ち着いて、深みが出てきたお酒です。
その複雑性がある旨味を活かすため、2度目の火入れをしないで蔵出しされます。
秋限定のひやおろしは生酒扱い
春先に火入れをし、出荷前にもう一度火入れを行うのが通常の日本酒です。
買った人の元で、品質が劣化していくのを抑える役割があります。
発酵を抑制して殺菌することで、品質を維持するためのものです。
一方ひやおろしは、複雑で繊細な香りや味を残すため、2度目の火入れをしないものが主力となっています。
生酒と同じ扱いです。
(現在は様々な技術や設備により、生のまま長期保存する日本酒もあります)
瓶の中でも発酵が進むので、生酒と同じように、購入後は冷蔵庫で保管しましょう。
ひやおろしが出回り始めるのは、9月から11月の間。
ひと月違うだけでも熟成感が増し、味わいが変わっていきます。
ただ酒造会社によっては、季節を先取りして、早めの時期に出ることもあります。
日本酒に限らず、食べ物もそうですね。
ですが、ひやおろしという「季節感」を残そうとする取り組みもあります。
ひやおろしの解禁日
ワインのボジョレー・ヌーボーのように法的に定められたものはありません。
ですが、季節感を残すために「売り始める日を決めよう」という動きもあります。
全国の若手の蔵元が集っている「日本酒造青年協議会」では、以下のような発表がされています。
毎年9月9日(重陽の節句)を「ひやおろし」の発売日(解禁日)とし、日本酒業界全体で統一して推進することを提言する
引用元:醸界タイムス
またその記事の中で、以下の記述もあります。
なお“ひやおろし”の定義には諸説あり、“ひやおろし”の新たな統一した定義について今後さらに検討を深める必要性があるが、当面は「厳寒期に醸造した清酒を一夏越して調熟させ、秋口に入ってほどよい熟成状態で出荷するもの」とする
ここまでひやおろしを、
- 春先に一度火入れをしている
- ひと夏を越えた熟成酒
- 2度目の火入れをしていない
と書いてきました。
それは冷蔵設備がなかった時代から受け継がれてきた手法が「火入れ」だからです。
現在は、技術の発展により、生酒のまま長期保存できるようにもなっています。
そういった側面もあり、火入れについての定義づけはされていません。
そもそも「ひやおろし」と聞くと「冷たいお酒」のような印象を受けますよね。
ですが冷やした日本酒という意味でもありませんし、飲むとき「冷やさなくてもいい」お酒です。
「ひや(冷や)おろし」の由来
日本酒をお店で頼む人が「ひやで」と注文しているのを聞いたことはありませんか?
ところが、運ばれてくるお酒は「常温」です。
日本酒は「常温の状態」を「ひや(冷や)」と言います。
冷やした日本酒は「冷酒」という呼び名です。
不思議ですね(笑)
「そんなことは知っている!」と思う人もいるでしょう。
でも、どうして常温を「ひや」と言うか、その理由を知っていますか?
江戸時代、棒手振り(ぼてふり)が「ひゃっこーい」と売り言葉をかけていました。
水を始め、常温のものを「ひゃっこい○○」と言っていたのです。
冷蔵庫が無いので、外気温と同じものは「ひや」です。
温めたものが、外気温まで下がったものも同じ扱いです。
日本酒を常温で飲むことを「ひや」というのも、そういった歴史の名残です。
夏の気温で発酵が進み、秋に入ってちょうど良い温度まで下がり(ひや)、飲み頃を迎えた日本酒。
それが蔵元から卸されるので「ひやおろし」です。
夏を越した秋に旨味が増すことから「秋上がり」とも言われています。
ひやおろしの飲み方
ひや=常温ですが、「常温でなくちゃ美味しくない」というわけではありません(笑)
日本酒に慣れていない人なら、冷やしたほうがスッキリと飲めます。
ただ、ある程度日本酒に慣れているなら、ひやおろしは常温か、お燗して飲むこともおすすめします。
より香りやコクの深さを楽しめるからです。
日本酒は飲むときの温度によって、香りの立ち方や、まろやかさが変わります。
冷たくすると香りが穏やかになり、すっきりと飲めます。
香りを開かせて、コクを深めたいならお燗。
その中間が良いならひや(常温)です。
普段、チューハイやビールといった、アルコール度数が低いものを飲んでいる人には少しハードルが高いかもしれません。
ですが「日本酒にハマりだした」という人は、お燗にもチャレンジして欲しいところ。
熟成酒は、温度を変えるだけで、別の美味しい顔を見せてくれるからです。
お燗が簡単にできる酒器や、お燗に向いている酒器もあります。
>>>日本酒をオシャレに!【徳利&おちょこセット】特徴・種類別まとめ
上記記事では酒器について触れていますので、参考にしてみて下さい。
おわりに
棒サンマをお供に、ひやおろしと一杯……。
秋を堪能できる楽しみ方だと思いませんか?
個人的には肉厚のシイタケに、ほんの少しお酒をかけて炙り焼き、醤油をひと垂らし……なんていうのも好きです(笑)
キノコなんて、一年中あるじゃないか、なんて言われそうですが、誰しも秋になると食べたくなるお酒のアテはありますよね?
秋の味覚や景色と一緒に、ひやおろしを楽しみましょう♪
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