北風が吹き始め、紅葉した葉を散らせる11月初旬。
日本酒の「寒おろし」が出回り始めます。
寒おろしは1年弱、蔵の中で寝かせられ、旨味をより引き出した日本酒です。
春先に一度火入れをして、蔵で一夏を越え、9月から11月にかけて出回るのが「ひやおろし」。
>>>秋に飲みたい日本酒「ひやおろし」とは|販売時期とおすすめの飲み方
寒おろしはその後に出荷されます。
ひやおろしの延長線上にあり、最終形態と言えるかもしれません。
日本酒は寝かせることで味わいが変化するからです。
まろやかさが増し、味わいに複雑性が出てきます。
特に夏を越すことで香味が変身します。
9月に出回るものと11月に出回るもので、味わいが違うのが面白いところ。
ひやおろしが熟成の旨味なら、寒おろしは円熟した旨味とでも言いましょうか。
しかも寒おろしが出る時期は、初搾り(新酒生酒)も出てくる時期。
寒おろしを少し保管すれば、同じ銘柄の初搾りと飲み比べることもできるでしょう。
日本酒の1年間を丸ごと飲めるなんて、とても楽しいですよね!
- もう少し寒おろしを詳しく知りたい
- 家で保管するときの方法は?
- 寒おろしはどう飲んだらいいの?
そんな疑問もあると思いますので、掘り下げていきます。
というわけで
日本酒「寒(かん)おろし」とは|特徴&販売時期まとめ
をお送りします♪
寒おろしの特徴
酒造会社によって異なりますが、寒おろしの特徴は、
- 早くて7カ月程度から11カ月くらいの熟成酒
- 生酒扱い(2度目の火入れをしない)
この2つです。
寒おろしは、ひやおろしと交代するように出回ります。
ざっくりとしたイメージですが、こんな感じです。
日本酒はお米が原料なので、お米の収穫が終わってから仕込まれます。
精米されたお米と仕込み水は、酵母の働きで発酵します。
お酒のもとになる「もろみ」になっていきます。
それを酒粕とアルコールに分けるのが「搾り」です。
その年度に収穫した新米で作ったお酒なので「新酒」。
初めて搾るので「初搾り」と呼ばれます。
日本酒は、焼酎やウイスキーのような蒸留酒ではないので、アルコール分は20%が限界。
それ以上濃いアルコールの中では、酵母自体が死んでしまいます。
ですが、それくらいのアルコール濃度だと、日本酒の味を劣化させる微生物も生きています。
冬の間は外気温が低いので、加熱処理をしない状態の「生酒」が飲めます。
生搾り、生詰めとも呼ばれます。
冬が終わり、気温が高くなり始める春先に一度、火入れ(加熱処理)をします。
殺菌の意味もありますし、発酵を抑えるという面もあります。
すべてを滅菌するのではなく、必要最低限の加熱です。
現在は酒造会社や卸し先にも冷蔵設備が整っているので、年間を通して生酒が飲めます。
また、酒造会社の設備により、お米自体を冷蔵保管することもできます。
ただ、一度火入れをしてからのほうが、熟成しやすくなる面もあります。
夏を越えた日本酒は、外気温の変化も相まって、適度に熟成したもの。
まろやかになり、旨味が凝縮しつつあるのが、9月から出回る「ひやおろし」です。
まだ、若々しさも残り、少し賑やかしい風味の中で、熟成感が出始めているのが特徴です。
そういった複雑性を残すために、おおむね、2度目の火入れをしないで出荷されます。
(厳密な決まりはありません。貯蔵方法も、火入れも、酒造会社のこだわりや方針があります)
>>>秋に飲みたい日本酒「ひやおろし」とは|販売時期とおすすめの飲み方
それが10月、11月と季節が進むことで、香味が落ち着き、深い味わいが出ます。
寒おろしは、ひやおろしの後の「寒い時期に卸される」ので「寒おろし」です。
ひやおろしと同様に、2度目の火入れをしないものが一般的です。
熟成が極まり、「完熟」ならではのトロっとした口当たり。
凝縮された旨味があるのが特徴です。
時期的にも、新酒生酒が出てくるので、飲み比べられるという醍醐味もあります♪
ひやおろしや寒おろしを家庭で保管するには
年の瀬から新年にかけて、同じ銘柄のひやおろしや寒おろしと、新酒を飲み比べられたなら……。
一年の締めくくりと幕開けにもってこいだな、とワクワクしませんか?
飲み納めに寒おろし、飲み始めに新酒。
結局、飲み「おさめて」いないどころか、飲みっぱなしですが(笑)
でも、同じ銘柄でなければ、飲み比べは難しいですし、そうそう都合良く出荷されないことも多いでしょう。
寒おろしがない銘柄もありますし、寒おろしと新酒の出荷がずれていることもあります。
2本買って、1本は家で年の瀬まで保管しておきたいですよね。
気をつけたいのは、ひやおろしにしても寒おろしにしても、2度目の火入れをしていないものがほとんどという点です。
常温で管理すると発酵が進みます。
扱いとしては「生酒」と同じです。
日本酒を造っている職人さんが「今が美味しい」と出しているお酒です。
その味を残したいなら保管状態に気をつけましょう。
日本酒は2度目の火入れをしているものでも、直射日光は苦手です。
高温になるところも苦手です。
新聞紙でくるみ(箱入りならそのままで)、なるべく外気温の影響を受けないところが望ましいです。
直射日光が注ぐ窓辺や、コンロのそばに置くのは止めましょう。
一番良いのは、ワインクーラーのような、一定の低温で管理できるものですが……。
一般家庭では難しいですよね。
冷蔵庫に入れましょう。
ただ、ドアポケットは振動を受けるので、避けた方が無難です。
※コチラの記事ではお手頃価格のワインセラーをご紹介しております。
場所はとられますが・・・1万円代で購入も可能です。
>>>ワインの保存は温度管理がカギ!セラーがなくても出来る方法
飲みきらない場合は空気抜きを使うのも手
封を空けたものの、飲みきらない場合ってありますよね。
一度封を空けてしまった日本酒は、ワインと同様、空気に触れることで味わいが変わります。
スパークリングワインで使う、空気抜きを使うのも手です。
【正規輸入品】VACUVIN バキュバン ストッパー2個付き V-20
長期保存には向きませんが、一瓶を何日かに分けてのむときに重宝します。
寒おろしの飲み方
銘柄や自分の好みによっても変わりますが……。
日本酒に慣れているなら、お燗して飲むのがおすすめです。
「お燗すると酒臭さが増すから苦手だ」という人もいると思います。
大量消費向けに造られたお酒は、どうしてもアルコールの匂いが鼻につきます。
ですが、良いお酒は冷やして飲んでも美味しいですし、温めると別の顔を見せることもあります。
特にひやおろしや寒おろしは、熟成した味わいが魅力です。
冷やして飲んだあとは、常温かお燗をして飲むと、より濃い旨みや、美味しさの広がり方を堪能できるでしょう。
お燗は電子レンジでもできますが、少し温度のムラが出来ることもあります。
一番いいのは湯煎すること……ですが。
台所に立つのも手間だし、徳利を持っていないという人もいると思います。
>>>日本酒をオシャレに!【徳利&おちょこセット】特徴・種類別まとめ
そんなあなたに・・・
お燗が卓上で簡単にできる酒器があります!
量をあまり飲まない人は「黒結晶 保温器付き酒器」がオススメです。
お湯を外容器に入れるだけで簡単に卓上で温められ、保温もできます。
冷酒にも使えますよ。
代表的な寒おろしの銘柄
寒おろしの日本酒にはどんな銘柄があるのか、知りたい人もいると思います。
日本名門酒会が取り上げている銘柄を要約しますので、ご参考までに。
なお、銘柄名や特定名称などは2017年のものです。
- 秀よし『純米酒 寒おろし』
- 製造元:(名)鈴木酒造店[秋田・大仙]
- 特徴:酸味の引き締めが美味しい。常温でも、お燗しても○
- 浦霞『特別純米酒 寒おろし』
- 製造元:(株)佐浦[宮城・塩釜]
- 特徴:完熟の旨味が冴える。やわらかくてふくよか。
>>>浦霞全31種類ランクまとめ【お米の良さ】を味わい尽くせ!
- 千代寿『特別純米酒 寒おろし』
- 製造元:千代寿虎屋(株)[山形・寒河江]
- 特徴:穏やかな香り、広がりをみせる旨味。
- 大七『純米生酛(きもと) 寒おろし』
- 製造元:大七酒造(株)[福島・二本松]
- 特徴:生酛(きもと)造りによる、深みのある味わい
- 若竹『特別純米原酒 寒おろし』
- 製造元:(株)大村屋酒造場[静岡・島田]
- 特徴:上品な香りと滑らかな口当たり。綺麗な旨味。
- 萬歳楽『特別純米酒 寒おろし』
- 製造元:(株)小堀酒造店[石川・白山]
- 特徴:心地良い吟醸香。熟成感のある旨味。
- 蓬莱泉『純米吟醸 寒おろし』
- 製造元:関谷醸造(株)[愛知・設楽]
- 特徴:お米の旨味が楽しめる、バランスの良い仕上がり。
- 七冠馬『特別純米 寒おろし』
- 製造元:簸上清酒(名)[島根・奥出雲]
- 特徴:果物を感じさせる吟醸香。なめらかな旨味。
- 五橋『生酛純米酒 寒おろし』
- 製造元:酒井酒造(株)[山口・岩国]
- 特徴:飲み応えたっぷり。高めの酸ですっきりする後味。
(参考:日本名門酒会より)
どの銘柄も2017年の11月中に販売されたものです。
毎年販売されるかどうかは、酒造会社の方針によりますが、11月が来たら酒造会社のサイトや、通販サイトをチェックしてみましょう。
ちなみに掲載した銘柄は、一升瓶(1.8L)で3,000円前後の価格です。
お財布にも優しいですね。
個人的には、浦霞がおすすめです♪
男女問わず人気があり、コスパも優れています。
浦霞についての詳しい記事はこちらから。
>>>浦霞全31種類ランクまとめ【お米の良さ】を味わい尽くせ!
おわりに
様々な設備や、保管状況が整うにつれて、飲食物の季節感が薄れつつあります。
春先には出始める冷やし中華、ほぼ一年中あるおでん。
それはそれで便利ですが……。
四季折々のものを味わうことで、移りゆく季節を感じるのも楽しいですよね!
熱々のお鍋を食べ、寒おろしの日本酒を飲み、ゆっくりと夜を過ごすのもオツですよ♪