妊娠中に生ものを食べるのはダメと言われてますよね。
生ものには、感染症の原因となる寄生虫、菌などがついている可能性があるからです。
健康な人ならば問題ない病原体でも、妊娠中は抵抗力が落ちていてるので心配です。
厚生労働省が妊婦さんは食べるのを控えるように推奨しているのは、ナチュラルチーズや、生ハム、スモークサーモンなどの加工食品です。
これらはリステリア菌がいる可能性があります。
リステリア菌は流産や早産が起きてしまったり、髄膜炎などを引き起こす怖い菌です。
妊婦さんは生では食べないほうがいいでしょう。
それでは馬刺しはどうなんでしょうか。
馬刺しや馬肉で食中毒はあまり聞いたことがありませんが、生ものなので妊婦さんが食べてもいいのか気になりますよね。
そこで、馬刺しや馬肉を妊婦さんが食べても大丈夫なのか詳しく調べてみました。
妊娠中に生ものを食べてはダメな理由
妊娠中に生ものを食べてはダメな理由は、妊婦さんの免疫力が低下しているからです。
身体に病原体や異物が入ってくると、免疫細胞が活性化してそれを排除します。
病原体から免疫細胞が身体を守ってくれています。
妊娠すると、受精卵がお母さんの子宮に着床します。
受精卵はお母さんの体とは違うので、免疫細胞が、受精卵を異物と判断してしまうことがあります。
受精卵を排除してしまったら困るので、妊娠中は免疫細胞の力を弱めているのです。
そのせいで妊婦さんは抵抗力が落ちていて、病原体に感染すると重篤化してしまうこともあります。
火を通していない食材には、食中毒の原因となる菌やウィルス、寄生虫がついている可能性があります。
なので、妊娠中生ものを食べるのは控えましょうと言われているのです。
牛肉の生食は禁止!でも馬肉は禁止されてない
食中毒の原因となる主な病原体は以下のようなものがあります。
注意ポイント
- 腸管出血性大腸菌
- サルモネラ
- カンピロバクター
- 寄生虫
2011年に発生した腸管出血性大腸菌による食中毒は、ユッケを食べた客が多数感染し、死亡者も出ています。
この事件以降、規制が強化され、生で牛レバーやユッケを提供するのは難しくなっています。
では馬肉の場合はどうなんでしょう。
馬刺しや馬レバーなど、生で普通に食べることができますし、お店でも提供していますよね。
平成16年から平成25年までに、生肉を食べたことで起きた食中毒事例をまとめた調査報告が食品衛生審議会の調査資料にありました。
牛肉 | 豚肉 | 鶏肉 | 馬肉 | |
腸管出血性大腸菌 | 308件 | 0件 | 0件 | 0件 |
サルモネラ | 51件 | 32件 | 190件 | 0件 |
カンピロバクター | 6件 | 25件 | 2543件 | 0件 |
サルコシスティス | 0件 | 0件 | 0件 | 20件 |
参考:食肉等の生食による畜種別食中毒発生状況(平成16~25年)
重症化しやすい病原体の食中毒は、馬では1件も発生していませんね。
ポイント
- 牛、豚は偶蹄類で馬は奇蹄類
- 馬は反芻しない
- 馬肉の衛生基準がしっかりしている
このような理由で、馬では食中毒が発生しにくいと考えられています。
それぞれ説明します。
牛、豚は偶蹄類、馬は奇蹄類
蹄を比べてみると、牛や豚は二つに分かれていますが、馬は分かれていません。
馬と牛では種類が違うので、牛の寄生虫や菌は馬には発生しません。
馬は反芻しない
牛は4つ胃を持っていて、食べたものを反芻しながら消化します。
反芻する動物は、腸管出血性大腸菌を保菌しています。
参考:牛における腸管出血性大腸菌O157保菌について | 一般財団法人 東京顕微鏡院
馬の胃は1つしかないので、腸管出血性大腸菌を持っていません。
馬肉の衛生基準がしっかりしている
馬の生食が始まったのは、400年前、加藤清正が朝鮮出兵の時に食べたのが始まりと言われています。
歴史が長いので衛生基準が早くから定められてきました。
トリミングの方法、器具の取り扱いなど、細かく基準が決まっています。
衛生管理が徹底された環境で処理されているので、食中毒が発生しにくいのです。
ただ最近になって、サルコシスティスという寄生虫による食中毒が、馬肉で発生するようになってきました。
資料を見ても、20件発生していますね。
サルコシスティスなど、馬刺しが原因となる感染症について詳しく説明します。
馬刺しが原因となる可能性がある感染症
牛に比べると馬肉は、食中毒を起こす可能性がある病原体はあまりいません。
しかし、サルコシスティスという寄生虫が原因と思われる食中毒が、最近増えてきています。
サルコシスティス・フェアリー|下痢や嘔吐などが起きる
サルコシスティス・フェアリーもしくはザルコシスティス・フェアリーは、馬の筋肉に寄生する寄生虫です。
平成20年ごろから食中毒の原因として取り上げられるようになってきました。
食べてから4時間から8時間後に下痢や嘔吐などの症状が出ることがあります。
ほとんどの場合、無症状か、軽い症状。
入院する事例もあまりありません。
サルコシスティス・フェアリーは、最近になって食中毒の原因菌ではないかと言われ始めたので、あまり調査が進んでいないのが現状です。
健康な人なら下痢や発熱程度で、予後も問題ありませんが、妊婦さんはどうなるかわかりません。
万が一症状が出てしまったとき、妊婦さんは治療のための薬を飲めません。
また、胎児に影響が出るのかも分かっていないので注意すべきですね。
日本では福岡県で2011年に馬刺しが原因と思われる食中毒が発生しています。
熊本市内の食肉加工業者が、カナダ産の馬のウデ肉を冷凍処理せずに、冷蔵保存していたものでした。
幸い症状は軽かったのですが、不衛生な環境で作られた馬刺しは危険ですね。
一般的な寄生虫はマイナス20度で48時間以上冷凍すると死滅します。
そのため、生で食べる馬刺しは、マイナス20度で48時間以上冷凍することが法律で義務付けられています。
参考:馬肉を介したザルコシスティス・フェアリーによる食中毒Q&A:農林水産省
サルコシスティス・フェアリーも、マイナス20度48時間以上の冷凍で死滅することが確認されています。
トキソプラズマ |馬肉では0%
妊娠中の感染症で怖いのはトキソプラズマです。
ネコが持っていることが良く知られていますが、生肉からの感染の可能性も指摘されています。
健康な人がトキソプラズマに感染しても症状はなく、何も問題ないことがほとんどです。
妊娠前に感染し、抗体を持っていた場合も特に問題ありません。
心配なのは、妊娠中に初めてトキソプラズマに感染すること。
胎盤を通して胎児に感染し、先天性トキソプラズマ症になってしまうことがあります。
脳や目の異常、流産、早産のおそれがあります。
ちなみに抗体を持っているかどうかは、医療機関で検査することができます。
費用は1000円から2000円ほどです。
岐阜県の食肉衛生検査所でトキソプラズマの調査が行われました。
それによると、牛肉の陽性率6.5%、豚肉の陽性率5.2%に対し、馬肉は0%でした。
馬はトキソプラズマに対して、感受性が低い可能性がある。
引用:生食ブームに潜むリスク:食肉におけるトキソプラズマの現状
という結論になっていますが、なぜ馬がトキソプラズマに感染しないのかわかっていません。
万が一を避けるためにも、妊娠中は馬刺しを生で食べるのは控えたほうがいいかもしれません。
トキソプラズマを予防するには、加熱と冷凍です。
メモ
- 67度以上で1~2分加熱
- マイナス20度で8時間以上冷凍
塩漬け、燻製では効果がはっきりしていません。
なので、しっかり火を通すほうが安全ですね。
栄養価の高い馬肉を安全に食べよう
生の馬肉を食べるのは、サルコシスティス・フェアリーやトキソプラズマなどの食中毒が心配。
だけど、これらの菌はマイナス20度で冷凍することで死滅することが分かっています。
そして、馬肉はマイナス20度で48時間以上冷凍することと、法律で定められています。
衛生管理がしっかりしているメーカーの馬刺しなら、安心して食べることができますよ。
馬肉は、鉄分やカルシウムが豊富で栄養価の高い食材です。
鉄分やカルシウムは妊娠中だけでなく、女性にとっては意識して摂っておきたい栄養ですよね。
しかも牛肉や豚肉よりもかなり低カロリー。
ダイエットにも最適です。
また、馬肉は馬刺しだけじゃなく、焼き肉にしても美味しいです。
脂が牛よりもあっさりしているので、もたれたりせず食べやすいです。
妊婦さんは万が一を避けるため、美味しい馬刺しを焼肉にしてみてはどうでしょうか。